蒲原です。
休日に遺品整理に関する相談を受けたことがありました。
その日、別の業務で休日出勤していた同僚から「留守電に遺品整理に関する相談のメッセージが入っているが、今は自分は対応できない、急いだほうがいい内容のようだからとりあえず話だけでも聞いてあげられないか」との連絡がありました。
私は特に仕事ではなく通常の休日だったのですが、そんなにお困りならとにかく話を聞くだけでもと思い、電話をしてみました。
結果としてその電話は1時間以上にも及ぶかなり長い話となりました。
遺品整理のセカンドオピニオン
そのメッセージの主は、すでに別の業者に遺品整理を依頼しているという方でした。
しかし、料金の高さやスタッフの対応にどうしても不安が募り、本当に大丈夫な業者なのかと心配するようになったそうです。
すでに依頼と契約は済んでいるので今からそれを変更することは出来ないが、相談だけさせてほしいというお話でした。
具体的なご心配の中身を聞いてみると、ご遺品の処分や搬出料金で100万円以上請求され、どうしてこんなに掛かるのかと問い返すと「そういう決まりになっています」と言われるばかりで具体的なことを教えてもらえないとのこと。そのため、請求内容や返答が本当に妥当なものなのかを専門業者に聞きたいと思ったそうです。
それを聞いてみる先として、不動産屋さんから「相談するならここが一番いい」と紹介された当社に連絡してみたということでした。
その不動産屋さんからの評価に感謝するとともに、病院で言うセカンドオピニオンのようなことが遺品整理サービスにもあるのだなと思ったことを覚えています。
いまだ横行する悪徳業者
結論から言えば、ご相談者が依頼なさったのは不誠実な業者だったと言っていいでしょう。
お話を聞くとそれほど大きな物件ではないはずなのに、ご遺品の処分と搬出に対する請求が100万円を超えるというのは明らかに法外です。
その上、金額に対するお客様のご質問にしっかり答えないというのは、私からすればありえない態度でした。
しかし、私のその感覚をそのままお伝えしてしまっては、このご相談者の不安をさらに煽るだけとなる可能性もありますし、ご不安なお客様のお話を聞くのみで一方的に判断してしまうのもどうかと思えました。
そこで「その業者について私は名前も聞いたことがないからはっきりとは言えないが、お話を聞く限りではその請求や態度には問題があるように思えます」といったことを、慎重に、表現を選びながらお伝えすると、「やはりそうですか…」と沈んだ声でのお返事。
しかしすでに作業も始まってしまっており、今から依頼先を変えようとするのは余計に面倒なことになるかもしれないため仕方ないとも仰っておられました。
業界にはまだまだこうした悪質な業者が残念ながら存在します。お客様が関係法令に明るくないことをいいことに、故人を亡くしたことで少なからず冷静でないだろうところにつけ込んだ形で契約を押し付ける…
私たちにとっては、最も忌避する行為です。
電話の向こうにいるこの方も、そうした悪質な業者の被害に遭ってしまったお一人でした。
この出来事が教えてくれたこと
そこからは、ひたすらお話を聞くことに専念することになりました。
その業者のことだけでなく、遺品の整理という作業そのものに対する不安や疑問、故人との思い出や形見の品など…
途中からは相談というより取り留めのない話になったようなところもありましたが、それでわずかでも安心していただけるならと、最後まで聞かせていただくことにしました。
そのおかげか、動揺のためその業者に言われるまま契約してしまったのは悔しいと仰っていたその方も次第に落ち着きを取り戻して、「今回のことは手痛い勉強代だったと思うことにします」と話されました。
そして「最初からお宅に頼んでおけばよかった」とも。
そんなふうに思っていただけるのは非常にありがたいことであり、また、私が話を聞いたことで不安だった気持ちが少しでも解消されたのなら喜ばしいことです。
しかしそれでも、この方が悪質な業者の被害に遭ってしまったという事実は変わりません。
かけがえのないその人がいた証と思い出を整理するのに、悪質な業者の口車のために心穏やかでいられない。
ただでさえ故人を失った事実に揺れているところに、そんな哀しさを畳み掛けるようなことをされてはたまったものではないでしょう。
「法に触れずにこころに触れる遺品整理」を目指す私たちですが、今回の出来事は、いまだこうして哀しみを重ねられてしまう方もいらっしゃる事実を私に教えてくれました。