1月 2020

生前整理も遺品整理も、どちらも最後の親孝行

ご両親がご健在か否かに関係なく、親御さんの家や所有物を片付けようとするのにかなりの躊躇を覚える方が多くいらっしゃいます。

それは、親御さんがまだご健在の場合は「死ぬ準備をするんだというようなものだ」と感じてしまったり、お亡くなりになった後の場合でも「あっさり片付けて、捨ててしまったりするのは薄情じゃないだろうか」と考えてしまったりするためであるようです。

親という最も身近な存在と、生き死にという絶対に避けられない事実との間から生まれてくるこの葛藤は、どんな人にも抱きうる自然な感情であり、仕方がないものだと思います。

しかし、そうした気持ちによる不安や心配で自分自身の精神も不安定にしてしまっているのであれば、それもそれで問題であるかもしれません。

大半の親は、自分のことで子供が心を痛めているなどという状況を望まないでしょうから、もしそのような状態になってしまっている方がいれば、考え方を変えてみてもよいのではないでしょうか。

生前整理や遺品整理は親孝行の1つだと考える

親御さんがご存命のうちにおこなう生前整理も、お亡くなりになった後におこなう遺品整理も、どちらも親孝行の1つであるという側面があります。

薄情かもしれないとか冷たいかもしれないとかではなく、そうすることが親御さんのためにも自分のためにもなるのだと言えるのです。 それはなぜか。

品物の片付け作業を親御さんが自らおこなえないのであれば、結局それはその子供である自身がやることになります。だとすると、1番問題になるのは「それをいつやるのか」ということであり、薄情だと感じても冷たいと思っても「いつかはしなきゃいけない」ことに変わりはないわけです。

今はまだご存命であっても、いつか亡くなってしまうのは自然の理。親が生きているうちに、1つ1つの品物について「あんなことがあったね」「こんなこともあったね」と、思い出を振り返りながら片付けをすれば、親子の時間を増やすことにもつながるでしょう。

親御さんに対して、品物の整理に躊躇を覚えるくらいの愛情深さがあるのなら、親御さんの方も同じように自分の所有物の後片付けを任せっきりにしてしまうのは申し訳ないと思っているかもしれません。

それならいっそ、親御さんがまだご健在であるのなら、一緒に片付け作業をするほうがお互いにとってよいのではないでしょうか。

すでに亡くなった親御さんの遺品の整理でも、それは同じ。本当に単なる私物もあるでしょうが、子供である自分に関係のある品物だって多くあるはずです。それらを見つけることで、改めて両親からの愛情を感じ取ることができれば、天国の親御さんとしても本望なのではないでしょうか。

自分が遺した物の片づけで、自分の子が追い詰められていることなど親は望まないはずです。ならば、そうした気持ちに囚われるよりも、「もやもやした心をすっきりさせるために」という気分で遺品整理に向き合ってよいのではないかと思うのです。

遺品整理代行業の存在意義

私たちの様な遺品整理の代行業者というのは、本来なら不要であるほうが家族関係としては健全なのではないかと思うことがあります。やはりご家族・ご遺族が自らおこなうに越したことはないだろうと思うからです。

しかし、仕事の都合やその他の事情でどうしても自分ではできないという方もいらっしゃいますので、そうした需要についてはできうる限り対応していきたいと考えます。それに加えて、気持ちの整理がどうにもつかないという方に対しましても、その心が少しでも軽くなるようなお手伝いができれば、私たちとしても1番望ましいことだと思っています。

似て非なる遺品整理と引っ越し

遺品整理士の堀川です。

 私どもでは遺品整理サービスだけでなく、荷物の運搬や引越しのサービスも承っております。そこで感じるのは、遺品整理と引越しにはよく似ている面と、まったく異なる点の両方があることです。

 引越しや荷物の運搬の際は、元の家から荷物を運び出しする事になります。建物の中から荷物を出し、トラックに積み込むのが普通の流れです。遺品整理においても、形見分けや自宅に運んでほしいご遺品を、同じように外まで運び出してトラックの荷台に積み込むことがよくあります。

その中で求められるのは、建物や家具に傷をつけないような丁寧さと繊細さです。引越しでも遺品整理でも運び出す品物はお客様にとって大切なものですから、万が一にも倒したり壊したりしないように気を付けなければいけません。さらに、時間的な制約がある場合にはこの作業をスピードを持って行わなければならなかったりして、依頼者から見ると圧倒される瞬間もあるかと思います。

  このように非常に似ている部分のある引越しと遺品整理ですが、そこに求められる「深さ」というのが両者の決定的な違いと言えるでしょう。

 まず何といっても、引越しよりもさらに細かい仕分けが必要になります。何しろ故人が大切にしていた物ですから、所有者ご本人がいらっしゃる引越しとは異なり、故人の気持ちを考えた上で判断していかなければなりません。

 

また、そうした分別だけでなく、作業中にご遺族となるお客様の感情の機微を察し取る繊細さも必要な能力です。「処分していいです」と言われた品物の中に、「とっておきたいけれど保管場所がない」「自分では管理できないから」といった見えない理由が隠されているものがあるからです。そのような機微を感じ取って、少しでもお客様(ご遺族様)の心に晴れやかになっていただくこと、この感覚が遺品整理サービスにおいて特に重要なものだと言えます。

 引越しサービスも遺品整理サービスも実際に両方おこなっている立場として思うのは、遺品整理サービスのほうが引っ越しサービスよりも労力が大きいという事です。それはお客様ご本人にとってもおそらく同じ。引っ越しは自分の所有物をどうにかして分けていけばよいですが、自分の所有物ではなく両親や親戚の遺品の整理となると自力で分別するのも困難な事が多いと思います。遺品の整理を自らやろうとする時には十分な時間をとって行うことをおすすめします。

生前整理と遺品整理

生前整理と遺品整理には全く違った側面があります。

生前整理

 生前整理は自分の死後、遺族に財産問題や相続トラブルが発生したり、処分の負担をかけないよう、財産や持ち物を生前に自分で整理することを言います。人生の終焉が見え始めた中高年者が行うことが多いのですが、年齢に関係なく親や友人、知人が亡くなったことがきっかけとなり自らの死を意識したタイミングで生前整理をしたり、病気などによって死期を意識した人も行うことがあります。

 一般的には、身の回りの必要な物と不必要な物を分別したり、財産がある場合は誰にどのように相続するのかなどを遺言書にしたためます。葬儀の扱いや遺品の処分方法など、遺族に委ねたいことはエンディングノートを活用することで自分の希望が伝わりやすくなります。一度きりのことではなく、物が増えたり家族関係が変わる中で、年に1回程度のペースで整理するのがおすすめです。

遺品整理

 一方遺品整理は死後、遺族などが故人の財産や持ち物を整理します。期限はありませんが、遺産相続や賃貸物件の退去などを行わなくてはならない場合は、葬儀後すぐに取りかからざるをえないこともあります。物の処分だけならば焦って行う必要はありませんが、時間と共に面倒になりますので、早めに行うことを勧めます。なお、処分する物が多い場合は、業者に依頼するとスムーズに行うことが可能です。

遺品整理は負担が大きくなる

 生前整理は本人が身辺整理をするため、何を処分すべきか判断しやすいうえに、1年以内に整理するなど、時間をかけて行うことができます。しかし、遺品整理は肉親とはいえ他人の物を整理することから、「どこから手を付けていいのかわからない」「どこに貴重品が保管されているかわからない」など、スムーズに進めることが困難な場合が多くなります。エンディングノートが作成されていればいくらか楽にはなるでしょうが、急いで行わなければいけない場合や、時間に追われたり、遠方や休みの日程調整がつかないなどの理由から業者に依頼する費用がかかるなど、遺族大きな負担を与えます。

 また、費用の面からも遺品整理は高額であるといえます。これは遺品整理業者を利用する場合になりますが、遺品整理は貴重品や身の回りの品を探しながら整理を行うのでどうしても時間がかかってしまいます。ただ、親族で行うとどうしても思い出の品が出てくるたびに手が止まってしまうので、業者に依頼することで比較的時間をかけずに遺品整理を終えることができます。

 遺品整理はただ不用品処分を処分する行為ではなく、思い出や遺族の心情に寄り添い作業を行うことが必要だと考えます。どうしても時間がかかるものですが、遺品整理を行う一業者として遺族にとってよりどころになれるような作業をしたいものです。