一般廃棄物の収集と運搬には許可が必要
もう1つ、落とし穴となっているポイントがこの点です。
遺品整理サービスなどによって発生することになる「一般廃棄物」を収集したり運搬したりするためには、実はその地区の市町村の「許可」が必要であることが法律で決められています。すなわち、許可を受けずにそうした事業を行うことは明確な「法令違反」ということになるのです。
社会的な需要の増加に伴って遺品整理サービスを行う事業者は増加していますが、営業エリアとしている地域で市町村からの「許可」を受けている業者はどの程度あるのでしょうか。というのも、市町村からの「許可」を受けるにはそれぞれの自治体の事情に応じた厳しい基準があり、おいそれと認可されるものではありません。なのに、複数の市町村にまたがって営業エリアを展開している業者は、本当にすべての市町村から「許可」を得ているのかどうか。もし許可を受けずにその事業を展開しているとなれば、明らかに法律に違反することであり、そのような業者に依頼することは無用のトラブルを招くことになりかねません。
たとえば私たちは、福岡県小郡市より「一般廃棄物収集運搬許可」を受けており、「実際に作業を行う場所が小郡市内である場合」に限ってご不要な品物の収集と処分場への運搬を行うことが認められています。その他の地域で作業を行う場合には、その地区で一般廃棄物収集運搬許可を持つ業者にお客様から連絡していただき、私たちが仕分け・整理したご遺品の中からご不要な物をその業者の車両に積み込んで処分場まで運搬してもらう、という手続きを採っています。この場合、私たちから業者に連絡すると「再委託」とみなされて法令違反となってしまう可能性があるためです。
法令を遵守したサービスを行おうとすれば、面倒ではありますがこうした段取りが必要なのです。もしも、許可を受けずにご不用品の収集と運搬を行っている業者があるとすれば、その業者は「廃棄物処理法」という法律に違反している「違法業者」ということになります。
ただし、許可を受けていない地域においてご不用品の収集運搬を行うことのできる例外も存在します。それについてはまた次の機会にお話しましょう。
お客様が罪に問われる可能性
次に、前回の記事で少しだけ触れた「悪質な業者のためにお客様が罪に問われる可能性」についてお話ししましょう。
これは、平たく言えばご不要な品物の処分を依頼した業者が、その品物を不法に投棄したことによって、その品物の「排出者=ごみを出した人」が責任を問われる可能性があるというものです。先日の記事で触れた産業廃棄物の処分を名目に余計な金額を請求する業者も悪質ですが、こちらの場合は処分場までの運搬料や処分料を請求しておきながら、実際には処分場に持っていかずにどこかの空き地などに放置することによって運搬料や処分料をそのまま自分たちの収入としてしまうというケースです。
こうしたケースでは、実際に品物をどこかに放置したのは悪質な業者ですが、その業者に依頼したお客様も実際にごみを出した「排出者」としての責任を問われる可能性があるのです。万が一それで有罪扱いとなってしまえば、5年以下の懲役か1000万円以下の罰金に処されることとなります。
そんなことになってしまえば、落ち着きを取り戻したり、故人を供養したりというどころではなくなるでしょう。そんな事態に陥らないために、こうした見落とされがちな点を理解しておくことは重要なことではないでしょうか。