11月 2019

孤独死の現状データ:統計に見る九州沖縄の危険性

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2019年5月に、一般社団法人日本小学短期保険協会孤独死対策委員会から「第4回孤独死現状レポート」が公表されました。

http://www.shougakutanki.jp/general/info/2019/report_no.4.pdf

2015年4月から2019年4月までの約4年間を対象にした調査統計で、世間的にイメージされている孤独死というものの印象を覆す内容も含まれています。

中でも特に目を引いたのが、九州沖縄における孤独死時の平均年齢が全国で最も若くなっていたことです。その数値は55.8歳。統計的に言えば、九州沖縄が最も若い孤独死の起きやすい地域だというのは思いもしないことでした。これは非常に危ないことですね。いつ自分の身内にも同じことが起こるか、気をつけておかなければならないでしょう。

その他にも普通のイメージからは少し離れた孤独死の実態がこのレポートには記述されています。

①孤独死者の平均年齢は男性60.8 歳、女性60.7 歳。2017年に公益財団法人生命保険文化センターから公表された平均寿命は、男性が81.09歳、女性が87.26歳となっています。
これと孤独死の平均年齢を比べると、男性で約20 年、女性で約27 年も若くして亡くなってしまっていることがわかります。孤独死の深刻な問題性が浮き彫りになっていると言えるでしょう。

②孤独死時の年齢は男女とも60 歳代が最も多いが、60歳未満での孤独死割合は5割を超えており、孤独死は高齢者だけの問題ではなくなっている。

③さらに顕著なのは、孤独死の死因として自殺である割合が非常に高いことです。厚労省の統計における志望者の全死因に対する自殺割合が1.5%前後であるのに対し、孤独死における自殺割合は11%と10倍も違っている。

④月別では、1月、7月、8月が特に多くなっている。季節ごとの割合でも春・秋より夏・冬の方が孤独死者数が多い。これは、先日更新した記事のように、夏も冬も同じように孤独死に至る危険が潜んでいるからと考えられるでしょう。
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孤独死は夏でも冬でも起こりうる

 孤独死は、往々にして特殊清掃の作業が必要になってしまうことが多いのですが、その事例の傾向を見ると夏と冬では原因が異なっていることがわかります。

孤独死-夏の原因-

 真夏の孤独死の多くは、実は熱中症が原因です。外ではなく室内にいるのに熱中症で倒れてしまい、そのまま亡くなってしまうというケース。エアコンを使わず、水分もとっていなかったために起こってしまうものです。

今年の夏も、東京都新宿区の住宅で高齢の姉妹二人の遺体が見つかるという痛ましい出来事がありました。近くに住む男性から「部屋の電気がつけっぱなしで、新聞がたまっている」と通報があったらしく、この姉妹の死因が熱中症だったそうです。この家は室内にエアコンも扇風機もなく、なんと団扇が落ちていたとか。

 夏の孤独死は、その腐敗の早さから周りへの影響も大きく話題になりやすいところがあります。 臭いによる被害、ハエなどの害虫による被害、体液などの染み出しによる被害など真夏の孤独死は近隣の住人へ与える影響が大きいのが特徴です。

孤独死-冬の原因-

 冬は、真夏のように熱中症を原因として室内で倒れ孤独死に至るといったことは少なくなりますが、冬には冬で別の孤独死の危険性が潜んでいることに注意が必要です。冬の孤独死は遺体の腐敗も進行が遅く近隣への影響は少なくなりますが、むしろそれによって遺体の発見が遅れてしまうことがあります。 そうなると、何週間、何か月も経ってようやく異臭などに気づいた近所からの通報で遺体が見つかる…ということも。発見が遅くなった分、遺体の腐敗は夏よりも進行してしまっている場合もあります。

 そうした事態を生み出してしまう冬の孤独死、発生する最大の原因は「ヒートショック」です。 寒暖の差が激しい場所の移動により、血圧が大きく変わってしまうことで心臓や血管に負荷が掛かり、心筋梗塞などを起こしてしまう現象が「ヒートショック」と呼ばれています。

暖房などで暖められている部屋から、冷たいトイレや廊下などに出た瞬間や、あるいは脱衣所や浴室など衣類を脱いで冷気に晒される場所が最もヒートショックの起きやすい場所とされています。

 真冬の孤独死案件で多いのも、やはりトイレや浴室などで亡くなられているケースです。特に高齢者で高血圧などの持病を持たれている方が多く見受けられます。

 高血圧の方がトイレに入りズボンを脱いだ際に下半身が冷気に晒されて血圧が一気に変動したり、便秘でトイレで強くいきんだりした際に血管が切れてしまい脳梗塞などで意識を失ってしまったりと、高血圧の方にとっては冬のトイレやお風呂は鬼門ともなりますので特に注意が必要です。

 室内だからと油断せず、夏は熱中症に、冬はヒートショックに気を付けていただくことが、自身の身を守るために必要なことではないかと思います。

特殊清掃 -孤立死の様々な形-

 特殊清掃が必要になる原因として孤立死が挙げられます。これは体が思うように動かないなどの理由から、外に出なくなることで地域の方との交流が少なくなったり、セルフネグレクトの状態に陥ることから引き起こされることが多いとされています。

 孤立死と一口に言ってもなぜその人がそのような状態になってしまったのか背景は様々あります。私の受けた特殊清掃業務の場合もそうでした。

 若くして自分から死を選んだ男性は有名大学を出て、これからというときに亡くなりました。泣きながら遺品を確認するご両親やご兄弟のことを考えると、自分から死を選んでしまった故人に対して怒りの感情が込み上げてくるようでした。

 自分の好きなように生き、アルコールのせいで体を壊してしまった故人もいらっしゃいました。持病の発作によりその場にうずくまったまま亡くなられたそうです。ご兄弟とも疎遠だったとのことで亡くなった後に連絡があり、関東から九州へ駆け付けられたようでした。

 マンションの8階にお住まいだった方が亡くなったお部屋は誰からも相続されず、亡くなった時から時間が止まったように1年間そのままになっていました。長い期間ののちに管理会社の申請が受理され裁判所の許可が下りたので管理会社の負担で特殊清掃と家財の処分を行うことになったという事例もありました。

 亡くなる理由は様々ありますが、「死」というものは自分だけのものではなく、確実にまわりの人にも影響を与えることを念頭に置きたいものです。

特殊清掃――その現場に存在する鬼手仏心

※記事中に、少し生々しい表現が含まれていますのでお読みになる際はご注意ください。

鬼手仏心という言葉をご存じでしょうか。
医療の場で、特に外科医の方に対して使われる表現だそうです。

外科医は手術の時に患者の体にメスを入れます。人の体に刃物を刺す、それはまるで鬼の所業のような恐ろしい行為ですが、しかしそれをおこなっている外科医の心中にはこの患者を助けたいという仏の心があるのだという意味ですね。

次の「遺品整理士はミタ」の記事にはどんなことを書こうかと思っていた時、この鬼手仏心の言葉を見かけて、これは特殊清掃にも通じるところがあるのではないかと感じたのです。

特殊清掃における鬼手

特殊清掃においての鬼手とは、ご遺体の発見現場における清掃作業につながります。

ベッドの上、床の上、トイレの中からお風呂の中まで、ご遺体が発見される場所は様々ですが、どの場所にも共通するのは「本当にここに人がいたのか」という実感からくる恐怖の感情です。

もちろん私たちが特殊清掃のため現場に立ち入る時には、ご遺体はすでに警察により運び出されているわけですが、それでも亡くなっていた場所にはその人の形を示すかのように体液が滲み、蛆虫などが発生しているわけです。

ご遺体そのものはなくても、「ここで亡くなっていた」ということがありありとわかる光景には、いつもやりきれない複雑な気持ちとともに「死」というものに対する恐怖心をも喚起させられます。

しかしそれらの感情をこらえて清掃作業をおこなわなければならない。

それは、体液の除去や蛆虫などの駆除だけでなく、腐敗によりご遺体から離れてしまった頭髪や歯、場合によっては内臓の一部かと思うようなものまで拾い上げることもあります。

特殊清掃作業を進めるにおいては上述のような感情に囚われてしまっては時間が過ぎるばかりですので、その気持ちを殺して淡々と清掃・片づけをおこなっていくのです。

「かつて人だったもの」を前に、無機質に淡々と作業を進めていく。これが、特殊清掃における「鬼手」にあたるのではないかと考えました。

特殊清掃における仏心

特殊清掃における仏心とは、先ほども触れたような故人に対するやりきれない思いと、そのご遺族への感情です。

身寄りがなく孤独死してしまった、セルフネグレクトのような状態でごみ屋敷になってしまった家の中で亡くなっていた、など状況は様々ですが、「どうしてこんなことになってしまったのだろうか」との思いは、ご遺族は当然抱かれる感情として、私たちの胸にもまた込み上げてくるものです。

清掃作業自体は淡々と進めつつも、しかし故人の生きた証を残す方法はないか、ご遺族のショックを少しでも和らげるために何かできないか、といったことは作業中常に頭から離れません。
このような気持ちを「仏心」と呼ぶことは言い過ぎでしょうか。

正反対の現場に共通する「人」への想い

「鬼手仏心」の言葉がよく使われる医療の場は人を生かすための仕事をおこなう現場ですが、特殊清掃の現場は人が亡くなった後におこなう仕事であり、性質としては正反対のようにも見えます。

しかし別の見方で、両者ともに「人の命にかかわっている」のだと考えれば、正反対ではなくむしろ同質の仕事であるとも言えるでしょう。

だからこそ、直接おこなっている作業の内容は体に刃物を刺したり体の一部を拾い上げたり除去したりというように「モノであるかのように扱う」ことをしながらも、実際の心のうちにあるのは「この人の心や体を何とかしてあげたい」という愛情であるという「鬼手仏心」の側面がそれぞれにあるのではないか。そのように思えてならないのです。

だからといって何かが変わるわけではないのですが、ふとした気づきを広げて考えてみたときに、そういう見方もできるのではないかと思いました。
とはいえ、何がどうであったとしても、特殊清掃サービスや遺品整理サービスに対する私たちの姿勢は何も変わりません。

法に触れずにこころに触れること。

ご遺族に対しても故人に対しても、ただそれだけを目指しています。

特殊清掃の現場から2-②

 いつも遺品整理士はミタをご覧いただきありがとうございます。遺品整理士の堀川です。

 今回は前回書いた特殊清掃の見積もりのお話の続きを書いていきたいと思います。

特殊清掃のお宅の現状

 特殊清掃のお話をいただきお見積りにお伺いしますが、高い確率で物が散乱しているように思います。体が不自由になり身の回りのことが出来なくなって行ったことが容易に想像でき、体の状態によってはセルフネグレクトのようになっていることもあるようです。

セルフネグレクト

『セルフ・ネグレクト』とは、生活環境や栄養状態が悪化しているのに、それを改善しようという気力を失い、周囲に助けを求めない状態です。

 “ごみ屋敷”や“孤立死”の原因とも言われます。 体が思うように動かせなくなり周囲とのコミュニケーションをとる機会が減ったり、配偶者や家族の死、自分の病気や仕事を辞めるなどさまざまで、年齢に関係なく陥ると考えられています。

地域からの孤立

 特殊清掃の案件になってしまう一番の要因として挙げられるのが、地域からの孤立や家族・親族とのコミュニケーションの不足であると思います。日ごろから周りの方とコミュニケーションをとることは自分の身を守ることにもなります。自分のことだけでなく周りのことも気がけられるようにしたいところです。

特殊清掃の仕事の基本①

 お久しぶりです。いつも遺品整理士はミタをご覧いただきありがとうございま。遺品整理士の堀川です。

 今回は特殊清掃のことついて書きたいと思います。

特殊清掃業務とは

 特殊清掃業務は遺品整理で行う必要物の捜索や残置物仕分け・搬出・処分だけでなく、亡くなった場所の除菌・消臭、ご依頼があれば原状回復のハウスクリーニング・リフォームまで一括してサービスの提供を行います。

 上記で述べた他に一番の違いと言われることに、急を要する点があります。遺品整理は基本的に親族側の問題であることが多いのに対し、特殊清掃はお話が来た時点で近隣に迷惑が掛かっていることが多いからです。これは亡くなった方が発見される理由が「異臭がする」との通報からの場合が多いことにつながります。

ご不用品の処分方法とスケジュール調整

 1つの案件の中で特に頭を抱えるのが、小郡市外で業務だった場合のご不用品の処分方法です。処分方法については市町村単位で決められており、処分業者や仕分けの方法、収集日時も違います。

 弊社は福岡県小郡市に拠点があり、小郡市から一般家庭ごみの収集運搬許可をいただいている為、小郡市内の業務では自社でご不用品の運搬と処分が行えるのですが、市外での業務では市町村別に決められた一般廃棄物収集運搬の許可業者もしくは委託業者に収集依頼を行います。

再委託の禁止

 また、小郡市外での業務で弊社が処分業者に遺品整理や特殊清掃で発生した不用品の処分を依頼した場合、廃棄物の処理及び清掃等に関する法律にある「再委託の禁止」に抵触し、違法となります。その為お客様に直接処分業者にご依頼いただき、処分業者とお客様のスケジュールとを合わせる必要があるのですが、年末などは処分業者のスケジュールが埋まっていることが多く、調整に苦労します。

 しかし、できる限りご依頼をいただいたお客様だけでなく、賃貸の場合は管理会社様のご要望にもできる限りお応えし、弊社に頼んでよかったと言っていただけるようなサービスを心がけております。ただ、いただくご依頼も様々あり試行錯誤の連続ですが、日々経験を積み重ね、お客様に寄り添えるサービスが提供できるよう精進いたします。