あまり意識されていないことかもしれませんが、両親の死去や施設転入などにより実家を整理する必要が出てきた場合、
その片付け作業は「自分の生前整理」でもあります。
どういうことかというと、実家に残っている自分の持ち物の片付けです。
幼少時代を過ごした懐かしい思い出ばかりの実家。
そこには、両親の持ち物だけでなく「子供」だった頃の自分の持ち物もたくさんあるはずです。
中には、自分が使っていた「子供部屋」が実家にまだそのまま残っている方もいるでしょう。
一人暮らしを始める時、結婚した時、新たに家を建てた時、など節目の際にその都度必要なものはすべて持っていったとしても、
必要なかったものを逐一処分しておくということはあまりないでしょう。
特に必要はないけれど捨てるには忍びないもの、手に取ればかつての光景が鮮明に思い出せるようなものは、
必要性がない代わりに今捨てる理由もないことからそのまま置いておくことがほとんどだと思います。
しかし、実家自体を整理しなければならないとなったら、必要がないことはそのまま捨てる理由になり得ます。
捨てたくないと思っても、実家の整理でそのための場所とスペースが残らなければ保管場所がないからです。
実家と別に今住んでいる家に置いておける場所があるのならそれでもいいでしょうが、捨てたくないすべての自分の持ち物を運ぶことは難しいでしょう。
つまり、実家を整理するという時には、両親の持ち物は当然ですが自分の持ち物を片付け・選別するという作業も必要になってくるのです。
それはそのまま自分自身に対する生前整理の一種とも言えるものとなるでしょう。
実家の整理とは両親の遺品整理、あるいは生前整理であると同時に、自分自身の生前整理でもあるわけです。
そしてこの解釈には大きな意味があります。
それは、自分の子供にかかる負担を減らすことになるということ。
今自分が実家の整理を通して両親の遺品整理、または生前整理をやっているとして、何十年か後には同じことを今度は自分の子供がやることになります。
子供にとっては今住んでいる家が「実家」となるわけですから、思い出のある品物だからと持って帰ってくることは、
数十年後に「自分の子供がおこなう実家の整理」の負担を増やすことに繋がるのです。
そうなると、色々残しておきたいものがあるとしても、未来に負担を残すほどではないと考えることもできるでしょう。
両親の持ち物や実家の整理は、自分の子供に対する将来の負担を減らすものでもあること。
いずれ来る「その時」に、そうした気持ちを持っているとまた違うのではないでしょうか。