梅の木

蒲原です。
今日は、私の経験した遺品整理業務の中から特に印象に残っているものを1つご紹介します。

遠方からの依頼者

遠く県外、関東地方にお住まいの方から福岡県内にあるご実家の遺品整理をご依頼されたことがありました。
依頼者様のご両親はすでに他界されてしまっており、誰もいなくなってしまったご実家をやむなく全て片付けてしまいたいとのご依頼でした。

ご実家と現住所の距離が遠く、なかなか帰省することもできなかったという方のご依頼は、独特の寂しさがあります。

お見積もりとお打ち合わせのため遥々お越しいただいて、懐かしいご実家の姿やお部屋、お庭の様子を見るにつけ、ご依頼者は涙ぐんでおられました。
中でも特に惜しんでおられたのが、庭にあった梅の木でした。ご両親ともにこの梅の花が大好きだったそうで、ちょうど満開に花を咲かせていたその木を眺めて、ご依頼者はしばらく佇んでおられたほどでした。

作業当日の気づきと提案

ご依頼者は、仕事の都合で実際の作業予定日には立ち会うことができないということで、作業当日は私たちだけで進めていくことになりました。
…が。家具や日用品の整理と仕分け、箱詰めなどをしながらも、どうしてもあの梅の木のことが頭から離れませんでした。

家の中のものを全て整理・片付けて、打ち合わせた通りにとって置くものと処分するものとを分けることは私たちにはできますが、特に惜しんでおられたあの梅の木は、どうすることでもできません。まさか根元から引っこ抜いてその他のとって置くものと一緒にするなどというわけにはいきませんから、このままでは空になった家と一緒に売りに出されて枯れてしまうか、建て替え工事などで抜根されるかでした。それでも、ご両親が大好きだったというあの梅の花を何かしらの形で残すことができれば、ご依頼者様がご両親を想う愛情、絆の1つを残せるのではないかと思えてならなかったのです。

そのことがずっと頭に引っかかっていた私は、作業を終える直前、せめてこの梅の木の写真を撮ってご依頼者様に送りたいと上司に提案しました。「ぜひやってください」との快諾の元、綺麗に咲いている梅の花の写真と、木の全体の様子を写したものを何枚も撮影し、その中から良く撮れていると思った数枚をご依頼者へ送りました。

不安と葛藤

しかしその後冷静になってみると、余計なことをしてしまっただろうか、不安になってしまいました。在りし日のご両親を思い出したご依頼者が、余計に辛くなってしまうのではないかと。ご依頼者へ向けて荷物を発送してから先方へ届くまでの数日間は気が気ではありませんでした。大切なご実家の整理をせっかく私たちに依頼してくださったのに、いらないことをして余計に辛くさせてしまったとすれば合わせる顔がありません。

ご依頼者からのお手紙

そんな逡巡を繰り返し悶々としていた数日後、ご依頼者様からお手紙が届きました。
そこには、打ち合わせた通りに実家を整理してもらえて助かったこと、悩みとしてずっと抱えていた実家の整理を終えることができた安堵感が綴られていました。
それから、私が送った写真への感謝も。

「両親に続いて両親が大好きだったあの梅の木もなくしてしまうのはとても辛いと思っていたところ、まさかわざわざ写真を撮って送ってもらえるとは思っていなかった、気持ちを汲んでもらえてとても嬉しい」と、ご依頼者からの大きな大きな感謝の気持ちが手紙にあったのです。

やってよかったという気持ちで、ようやく私は安心することができました。誠意から生まれた行動というのは、やはり伝わるのだとも思いました。

ご遺品の整理サービスとは、何度経験を重ねても「どうすることがお客様のためになるのか」ということにはっきりした正解はありません。
その時は「この方がいいはずだ」と思っても、お客様にとっては辛いことであったり、後から自分で疑問に思ってしまうことはたくさんあるからです。

それでも、「こうしたほうがいい」と自分で心から思えたならば、その通りにやってみること。でなければ、ただ無難なだけの作業になってしまい、ご依頼者の気持ちに寄り添うことも、前向きになっていただくこともできないと思います。

この梅の花の写真の件は、私にとってとても思い出深い遺品整理業務となりました。

法に触れずにこころに触れる遺品整理

その信念の貫徹を改めて決意させてくれたものでした。

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