蒲原です。

特殊清掃サービスの作業をおこなってきた後には、いつも精神的に不安定な気持ちになります。
現場の様子から見えてくる故人の生活ぶりや死に際のご様子、ご遺族の動揺した様子など、重たい感情をどうしてもその場だけで処理できずに家まで引きずってしまうこともしばしばありました。

 

特殊清掃後に沸きあがってくる感情

自分でも特に引き摺ってしまったなと思うのは、先日ご紹介した20代男性が自殺した現場でのことです。

自殺した故人の部屋で、体液で汚れてしまった品物の中から遺品を探そうとするご遺族2人の姿を見て故人に対する怒りさえ覚えてしまった私。

ご遺族2人がお帰りになった後、片づけをしていた私はその怒りが少しずつ大きくなっていくのを感じていました。

ご遺族に感情移入しすぎたせいなのか、故人にも彼なりの事情や考えがあっただろうとは思いつつ、ご遺族のいたたまれなさを想像してのやるせなさがあふれてきて、ご遺体のあった部屋で片づけをおこないながら1人で故人への怒りをつぶやいていました。

「あんなに大切に思ってくれている家族がいながら、どうして自殺なんかしたのか」
「あんなに大切に思ってくれている家族がいるのに、どうして頼れなかったのか」
「あんな優しそうなお母さんにあんな悲しい顔をさせるなんて」
「あんな明るそうな妹さんにあんな沈んだ顔をさせるなんて」

何の事情も経緯も過去も知らない私ですが、目の前で見たご遺族2人のあまりにも悲痛な様子に、今振り返れば自分でもおかしいと思うくらいの怒りを抱いてしまっていました。おそらくは、ご遺族に対して何もできなかった自分のやるせなさを故人への八つ当たりに転化してしまっていたのでしょう。

片付けと後始末を淡々とおこないながら、口からは故人を責めることばかり出てきて、1人声を荒げてしまっていました。

ご遺体の見つかった現場で、1人で怒りの声を上げながら片付け作業をしている。
傍から見れば異様な光景だったのではないかと思います。

しかし当時の私はそれも気づかないほど主観的になってしまっていました。

 

特殊清掃という仕事の性質

しばらくして我に返りましたが、その日は帰宅した後もどうにもやりきれない悶々とした気持ちのままだったことを覚えています。

似たような状態には、今でもなりかねません。

特殊清掃のご依頼をいただく場合というのは、ご遺族にとって望まない形でどなたかが亡くなっていることがほとんどです。
亡くなったご本人の事情については何もわからないままにご遺族の辛そうな様子だけを目にすることになるため、やるせない気持ちがどうしても湧き上がってきてしまいます。

自分が口出しをすることではないのだと割り切ろうとしても、あの20代男性の自殺現場ではとてもそれができない状態になってしまいました。

例えるならば、精神的に不安定になってしまった方のカウンセリングをおこなうような精神科医の方と似たようなものでしょうか。
相手から伺う話に気持ちを引き摺られて、自分自身も不安定になってしまう場合があると聞きます。あの時私に起こっていたのはそれと同じようなことだったのではないかと思います。

特殊清掃サービスとは、現代の社会情勢上どうしても必要な仕事・サービスであると同時に、無いなら無いほうがいい仕事でもあります。
矛盾するようなこの性質を強く感じながら、日々仕事にあたっています。

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