法に触れずに心に触れる遺品整理~靴磨き~

蒲原です。
今回も、私の印象に残っている遺品整理業務をご紹介します。

 

県内からのご依頼者

福岡県内にお住まいの方から、同じく県内にあるご実家の整理のご依頼を受けたときのことです。
お父様はすでに他界され、お母様も施設に入られるということで、誰もいなくなってしまうご実家を片付けたいとのご依頼でした。

しかし、やはりご実家ですからご依頼者の思い入れは非常に強く、ご自身だけでなくご両親が大切にされていたものも多くあることから、とって置きたいと思うものと処分するものとをなかなか決められないでいらっしゃいました。
そこで私たちからは、種類別に品物を分けてその中でとっておきたいものと処分するものとに仕分けていくことを提案、多くの品物を私たちが種類別に分けてまとめ、その中からご依頼者にとって置きたいものを選んでいただくことにしました。

お母様が好きだった服、お父様が愛用されていた腕時計、あるいは本にノートにハンカチなど、やはり多くの思い出や懐かしさがこもった品物が多く、一度「処分する」とされたものの中からも「いや、やっぱり…」と考え直されている場面も何度もありました。

 

靴の発見

そうした作業の中で、施設に入られたお母様が普段使いにされていたという靴をいくつか見つけました。同じ場所には他界されたお父様の靴も一緒にあり、これはどうなさいますかとご依頼者に尋ねると、「汚れてしまっているし、それは処分で…いや、でも…」とお悩みの様子。

そこで、「ではご両親のそれぞれ一足分ずつをとって置かれるようにしてはいかがですか?ひょっとしたらお母様は施設からまたこちらに戻ってくることもあるかもしれませんから」とご提案したところ、「そうですね、それがいいです」と嬉しそうに仰ってくださいました。

いい提案ができたと自分でもいい気持ちになったのですが、靴を見ると非常に汚れが目立つ状態になっています。これでは、せっかくとって置いたとしても履くには履きづらいし、保管場所にも困るかもしれないと思った私は、そういえば自分の家に靴磨きのセットがあったと思い出し、翌日の作業日に持ってくることにしました。

 

翌日、他の品物の整理作業を仲間に任せて、持ってきた靴磨きセットでこっそり靴を掃除していると、ご依頼者に見つかってしまいました。

 

何気ない気遣いへの大きな感謝

「そこまでしていただけるんですか?」

本当は綺麗になった後でお見せしたいと思っていたのですが、「ええ、せっかくとって置くものですからきれいなほうがいいだろうと思いまして」と答えると、涙ぐんで御礼の言葉をくださいました。

品々の選別にどうしても迷ってしまうくらいご実家とご両親に愛情のあったご依頼者は、たまたま見つかった靴を掃除してもらっているのが殊のほか嬉しく感じられたそうです。
私にとっては何気ない気遣いのつもりだったことでしたが、ご依頼者には非常に感謝していただけた瞬間となりました。

相手のことを思い遣った行動を実践すること。「こころに触れる遺品整理」とは、人としてのそうした根本的なところから生まれてくるものでもあるのだなと感じたことを覚えています。

こうした気遣いが普通にできる社員をもっと増やしていきたい。仲間や後輩たちへの指導と教育への決意を新たにした場面でした。

 

 

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